院長コラム

健康を守る「歯科のかかり方」

歯は、一生の財産です。

誰もが、長い人生の最後まで、健康で元気に楽しく過ごしたいと願っています。
ある調査によれば、残っている歯の本数が多い人ほど元気で自立しています。
また、医科にかかる医療費は、歯の本数が多い人ほど少ないことも分かりました。
自分の歯でしっかり噛んで食べることが、元気な体をつくっているとわかります。
また、近年の研究で、歯周病原菌などお口の中の細菌は、血液や歯周組織から体に入り込み、
全身疾患の発症に関係していることも解明されてきました。
しかし、厚労省が行った歯科疾患実態調査(2005年)によると、28本の歯のうち7本を60歳で失い、
80歳では19本をも失っています。つまり80歳では9本程度しか残っておらず、
残った歯も充分機能していないのが現状なのです。

あなたの歯は、いま何本ありますか?
日本歯科医師会では、80歳で自分の歯を20本残そうという「8020運動」を進めています。
「20本」は何でも好きなものを食べ、味わえる快適さの目安です。

食べる楽しみは、歳を重ねるごとに大きくなります。
また、よく噛むことは消化を助け、血の巡りを良くして心も身体も活性化し、老化を防ぎます。

一生を通して、歯や口の健康を維持することは「からだ」や「こころ」の健康にも大いに役に立つことがわかってきています。
今からでも遅くはありません。
早すぎることもありません。
「病気を予防すること」を第一に考えて実行すれば自分の歯で
一生噛むことも不可能ではありません。 
大切なご自分の歯を失わないためにいままでの「歯科のかかり方」の発想を変えてみてはいかがでしょう。

リスクの把握とリスクコントロール = 最新の予防歯科学

歯が痛くなったら歯科医院に行く、歯は悪くなったら治療すればいいという考え方が、
結局、自分の歯を失うことになってしまいます。
歯の病気は、自覚症状が出てくるのは、かなリ悪化してしまってからです。

歯を失う二大疾患は、むし歯と歯周病です。
このような慢性の病気は、悪くなったら治療をうけるという繰り返しでは、
根本的な解決にはなりません。

では、どうすれば・・・?

むし歯や歯周病は、お口のなかのプラーク(細菌の集まり)によって起こります。
ひどくなるかどうかは、個人差があり、その人の病原菌と、それに対する抵抗力によって異なります。
ですから、あなたがむし歯や歯周病にかかりやすいかどうか、細菌と抵抗力に関わる因子(リスク因子)を
検査・診断した上で、そのバランスをコントロールすること(リスクコントロール)ができれば、
年をとっても歯で苦労する心配もなくなるでしょう。

健康を守り・維持するためには、適切な処置はもちろん、リスクの把握と継続した
リスクコントロール(最新の予防歯科)が必要です。そのために歯科医院を利用してください。
それが「かしこい歯科のかかり方」です。


むし歯や歯周病の状態を調べるために様々な検査をします。

・レントゲン撮影(14枚法規格撮影・オルソパントモ撮影)

・歯周ポケット測定(歯ぐきの溝の深さの測定)

・レーザーむし歯診断(レーザーう蝕診断装置「DIAGNOdent」による測定)

・口腔内写真撮影

・リスク検査(むし歯や歯周病のかかりやすさの検査)

これらの検査の結果をもとに、診査・診断することから治療と予防の第一歩が始まります。

今後1年間にむし歯が発症する可能性 むし歯のリスクレーダーチャート
今後1年間にむし歯が発症する可能性 むし歯のリスクレーダーチャート
プラークをコントロールする。

むし歯と歯周病予防の中心は、原因であるプラークの増殖を抑制し、
悪影響を及ぼさない程度にいつもコントロールしておくことです。
そのために、自分自身によるパーソナル・プラークコントロール(セルフケア)とともに、
わたしたちでなければできない知識や技術、器具を用いた専門家による
プロフェッショナル・プラークコントロール(プロケア)が必要となります。

≪パーソナルプラークコントロール≫
ブラッシング(フロス・歯間ブラシ)
フッ化物応用・キシリトールなど

≪プロフェッショナルプラークコントロール≫
歯石除去・ルートプレーニング(根滑択)
PMTC(歯のクリーニング)など


「自分の健康は自分で守る」という意識を大切にして下さい。
そのための専門的なアドバイスやバックアップは私たちが全力で行います。

健康を守り維持するために

わたしたちは、健康を守り維持するために通っていただく診療室づくりを心がけています。
健康を守り維持する受診では、科学的できめ細かな診断をしたうえで、必要であれば最小限の治療を行い、
発症抑制のためのプログラムを作成し、それに沿って専門家のケアを 担当の歯科衛生士が提供します。

あなたも健康を守るかかり方を始めませんか?

まず、むし歯や歯周病のかかりやすさの検査(リスク検査)など、
自分のことをもっとよく知っていただくための検査を受けていただくことをお勧めします。
セルフケアも治療も、自分自身のからだについて、よく知ることから始まります。
充実した健やかな生活を送るために、ご一緒に頑張りましょう。

ご質問などございましたら、いつでもお気軽にお尋ねください。

歯の健康を取り戻すために

―う蝕と歯周病は細菌感染症であり、生活習慣病です―

う蝕(むし歯)という病気をなおすには?

う蝕とは、歯の表面にベタベタしたノリのようなプラーク(バイオフィルム)をつくった細菌が、
歯からミネラルを奪って、歯の組織を破壊する病気です。
う蝕原因菌のつくるプラークは、飲食のたびに酸を作り、歯のなかからリンやカルシウムを奪います(脱灰)。
しかし、唾液が酸を中和し、さらに奪われたリンやカルシウムを歯のなかに戻してくれます(再石灰化)。

歯の表面では、揺れ動くシーソーのようにこれを繰り返しています。
このバランスが崩れると一方的に歯のミネラルが奪われ、
ひどくなると歯の組織が崩れ、破壊され、穴があいてきます。
う蝕という病気は、このようにからだのバランスが崩れている傾向を
言います。たとえば糖尿病が、糖の消費と生産のバランスが崩れて、
血液の中の糖の量が多くなる傾向をいうのと同じです。


同じような生活をしていても、同じように風邪をひくわけでもなく、
誰もが同じように糖尿病になるわけでもないように、むし歯だって、甘いものが好きでも
むし歯にならない人もいれば、毎食後歯ブラシを使っていてもむし歯になる人もいます。
むし歯のかかりやすさには著しい個人差があります。

むし歯になったところを削って詰めても、かかりやすさの治療を
行わなければまた悪くなります。
その繰り返しで歯を失ってしまいます。
むし歯のかかりやすさの因子は、ミュータンス連鎖球菌の感染・
ラクトバチラス菌の数・飲食の頻度・プラークの量・唾液の能力や量・歯の表面の性質・フッ素利用の有無などです。
これらはリスク検査により診査・診断します。
その上で、立案した発症抑制プログラムに沿ってリスクコントロールとプラークコントロール
(修復物の適合改善・フッ素応用・PMTC・キシリトールなど)を行います。

う蝕治療の極意は、ていねいで精密な処置・修復と共に、ほかの生活習慣病と同じく
自分のかかりやすさを知って、リスクを減らし、発症しないようにコントロールしていくことです。

歯周病とは?

歯周病の進行プロセス


-歯は、老化ではなくならない-

年をとって歯がぐらぐらしたり抜けるのは、歯周病という病気のためです。
歯周病は、歯肉炎から始まり、進行すると歯を支える組織が徐々に溶けてしまう病気です。
10代の約60%が歯肉炎に、30代では80%の人が歯周病にかかっています。
しかし困ったことに、かなり悪くならないと自覚症状が出てきません。

歯が揺れる、歯ぐきが腫れて痛むというような症状を自覚した時には、すでにかなりの重症です。
生活習慣病といわれる慢性の病気は、ひどくなって、からだに障害が出てくると治癒は難しくなります。
歯周病も同じで、まず病気をひどくしないこと、かかり始めのうちに進行を食い止めることが大切です。
歯周病は、むし歯と同様、細菌の引き起こす病気であり(バイオフィルム感染症)
生活習慣によってかかりやすさが左右されます。
歯周病治療の極意は、かかりやすさの因子の改善(リスクコントロール)
そしてプラークコントロールです。
プラークコントロールには、パーソナルプラークコントロール(セルフケア)とプロフェッショナルプラ-クコントロール(プロケア)があり、これを組み合わせて行います。
かかりやすさの因子(リスク因子)には、遺伝的因子や環境的因子 ----喫煙・糖尿病・ホルモンバランス・
食生活・歯ならび・かぶせ物の適合性・歯ぎしり・かみ合わせなど-----があります。

歯周病治療の流れ
歯周病治療の流れ
-保険治療と自費治療-
  • 医療保険制度の仕組みは昭和20年代に出来たもので、
    命を救うことやケガや急性の病気を治すことを主な目的にしています。
    医療保険の考え方のなかには、元気なうちの快適さを保険でまかなう、
    健康を維持するという発想はありません。
    例えば、延命医療にはお金を惜しみませんが、肩こりは保険で治してはくれません。
    歯科の病気は、基本的に急性の病気ではなく、予防が効果的な慢性の病気ですから、
    現在の保険の仕組みと調和しないところがたくさんあります。
    また長年にわたる歯科医療抑制策により、進歩した歯科医学とのギャップが大きくなっています。
    歯の健康を守り・維持するための治療や予防が日本において一般的に行われにくいのはそのためです。

  • 眼科では眼鏡は保険に含まれず、耳鼻科でも補聴器は保険がききませんが、
    歯科では、この種のものも保険でできることになっています。
    しかし、オーダーメイドで作製するつめもの(インレー)や、かぶせ物(クラウン)、入れ歯(義歯)等は
    保険治療とは別に自費による治療法があります。
    自費治療では、医学的見地から体の健康を考え、セラミックもしくは体に安全な金属(バイオメタル)を
    使用します。
    また歯の健康を長く保つための現在の歯科医療水準での治療を行います。
    人工の歯は、からだの大切な一部になるのですから、慎重に選びましょう。

  • 歯の健康を守り・維持し、かつ経済性を両立させる極意
    悪くなったら治療を受けるという繰り返しでは健康を維持することは難しく、
    しかも結果的に費用もかさみます。
    かかりつけ歯科医をもち、保険が利かなくても、必要なことは自費により適切な検査や診療を受ける。
    そのあとは悪くしないように定期的にケアに通う。
    ぜいたくなようで悪くして治療を繰り返すより経済的なかしこい歯科の利用法です。
    リスクを下げる治療を受け、日頃から予防と健康管理のために歯科医院を利用されることをお勧めします。

健康を守り・維持するために

歯や口の組織は一度病気で傷つくと、修復のための治療は出来ますが、
元の状態に戻すことはなかなか難しいものです。
それだけに歯とお口の健康を守り維持することが大切になります。
自分の歯で何でも食べられることは、なんと素晴らしいことでしょう。
この幸せは、高齢になればなるほど実感することです。

歯とお口の健康は「からだの健康」への入口でもあります。
「自分の健康は、自分自身が守る」という意識を大切にして下さい。
そのための専門的なアドバイスやバックアップは、わたしたちが全力で行ないます。

リスクコントロールとプラークコントロール

歯を失う原因であるう蝕や歯周病は、プラーク(病原性バイオフィルム)によって引き起こされますが、
その進行度や頻度などには個人差があり、年齢によって、歯の部位によって、細菌の種類や数、
唾液の能力や量、歯の性質、食習慣などによって異なります。
そこでそのかかりやすさを診査診断するためにリスク検査を行います。
それによりリスクを把握し、その上で発症抑制プログラムを立案します。
プログラムに沿ってリスクコントロールを行い、口の中の細菌を
健康な状態に保つためにプラークコントロールを継続的に行っていきましょう。

バイオフィルムの破壊と除去

虫歯や歯周病は、細菌の感染によって起こります。
そこに、唾液や食事など生活習慣や炎症などの要因がからんで生じるのですが、
この細菌は、風呂場や流しのパイプの内側にこびりついているヌルヌルした汚れと同じで、
簡単には落ちない頑強な細菌の構造体(バイオフィルム)をつくっています。
このため、薬はほとんど効きません。
これを放置しておくと、細菌から毒素や刺激物質が出つづけ、歯や歯を支える組織が破壊されてしまいます。
そこで、自分自身で行うパーソナルプラークコントロール(セルフケア)とともに、
このしつこい細菌の塊を除去するために、わたしたちでなければできない知識や
技術・器具を用いた、専門家によるプロフェッショナルプラークコントロール(プロケア)が必要になります。

歯面に付着した細菌は、時間の経過とともに数を増やし、小さな集団(マイクロコロニー)になります。この細菌の集団がさらに増え、細菌の出す分泌物に覆われて、フィルム状になり歯面に強固に付着するオーラルバイオフィルムになります。

厚生労働省は最近、国民の健康目標「健康日本21」発表しました。
そこには「定期的に歯石除去や歯面清掃を受ける者の割合」を増やそうと目標を
掲げて呼びかけていますが、その理由はここにあります。
口の中のプラークを健康に保つことは、からだの健康にもつながります。
高齢者の誤嚥性肺炎予防ばかりでなく、最近の研究では、口の中の細菌や歯ぐきの炎症は、
動脈硬化や脳卒中、妊婦の低体重児早産の原因や、2型糖尿病のリスク因子になるなど、
アメリカで全身疾患との関係の研究発表が相次ぎ、センセーションを巻き起こしています。

定期的なメインテナンス

車や家が、定期的なメインテナンスによって美しく長持ちするように
お口の健康についても同じことがいえます。
メインテナンスは、治療などによって得られた健康な状態を持続させ再発を防ぐことを目的としています。
例えば歯周ポケット内の歯周病原菌群は、処置後12~16週でもとの細菌叢に戻る傾向があることが
最近の研究で明らかになっています。

そこでリスクの程度に応じた今後のメインテナンスプログラムを立案し、
それに沿ってリコール(次回来院日)が設定されます。
リコールは必ず守り、大切なお口の健康を保ってください。
もしリコールでのメインテナンスを定期的に行わないと、
病気を再発させたり進行させてしまうことがあります。

・バイオフィルムとPMTC
    近年の研究で、う蝕や歯周病はバイオフィルム感染症であると認識されている。
    細菌の出す分泌物のフィルムに覆われているため抗菌物質が効かず、強固に付着しているため
    歯磨きだけでは難しく、専門家による機械的清掃(PMTCなど)が最も有効であるといわれている。
・3DSとは
    PMTC後に薬剤を応用しミュータンス菌の除菌を目的としたシステム。
    型取り後ドラッグリテーナーを製作し効果的に除菌する。
・フッ化物応用
    虫歯予防には必須。歯磨剤と歯科でのフッ素塗布併用

「歯の予防後進国」日本

悪くなったら治療を受けるというかかり方から、悪くならないように予防のために歯科に通うというのは、
いまや世界の常識です。
アメリカでは、全国民の約80%の人が健診やクリーニングのために定期的に歯科を受診しています。
歯の健康管理が進んでいるスウェーデンでは20歳未満のほぼ全員が、
成人は比較的高額の費用がかかるにもかかわらず90~95%の人が定期的な管理を受けています。

最近日本でもそのような歯科のかかり方をする人が徐々に増えてきました。
厚生労働省の調査では、50歳以上の国民は10年間に平均5.4本の歯を失っています。
これに対して定期管理を受けている人たち(日本ヘルスケア歯科研究会データ・通院患者30歳以上)を調べると10年間に平均0.7本の歯しか失っていません。
失敗してから痛い思いをしてお金をかけて頻繁に通うか、気持ちよく定期管理のために年に何回か通うか?
定期的に美容院や散髪に行くように健康管理のために通う方が、賢い歯科のかかり方だと思いませんか?

お口と全身の健康との関係が次第に明らかになり「歯の数が多い方がQOL(生活の質)や
ADL(日常生活活動能力)、視力と聴力、運動能力等が高い」ことが分かってきました。
痴呆とも関係し、また、よく噛むことは肥満予防・がん予防・胃腸の快調・美容などにもつながります。

わたしたち歯科医師と歯科衛生士など専門スタッフは、それぞれの役割を通して、
皆様の健康を守り・維持する「かかりつけ歯科医院」でありたいと願っています。
ぜひ、定期的な来院と、毎日のパーソナルプラークコントロール(セルフケア)を守り、
あなたの健康を増進してください。

お子様の健康を守り・育てるために

一生、健康な歯で食事や会話をし、微笑むことが出来たらどんなに幸せなことでしょう。
わたしたちは、お子様の歯と口の健やかな発育を願って、ご家族の方々とご一緒に、
お口の健康管理をすすめていきたいと考えています。
最初の重要なステップは、健康な永久歯列の完成です。
子供の歯は、むし歯になりやすく、お口の環境や生活もむし歯に侵されやすい条件を備えています。
しかし、たとえ乳歯が残念ながらむし歯になったとしても、その原因を科学的にきちんと見つけ、
対応し予防することで、むし歯のない健康な永久歯列を完成させることは、
今では決して難しいことではありません。
最近の研究により、むし歯はその原因も予防法もわかっている病気です。
ただし、むし歯がお口の中にできてしまう条件は人によって違いがありますので、
個人のリスクに合わせた対応をする必要があります。

かかりやすさの違い

甘いものが好きなのにむし歯になりにくい人、よく歯磨きをするなど気をつけていても
むし歯になりやすい人がいます。
むし歯は誰もがいつでもかかる病気ではありません。
インフルエンザが大流行してもかかる人とかからない人がいます。
むし歯も、やはり細菌感染症です。むし歯にかかりやすい人とかかりにくい人がいるのです。
さらに、なりやすい歯とそうでない歯があります。なりやすい部分とそうでない部分があります。
なり易い時期もあります。
むし歯ができるわけを考えればなるほど納得です。
歯はいくつもの条件が重ならないとむし歯にはならないのです。

う蝕(むし歯)は細菌感染症であり、生活習慣病です

-今までのむし歯予防に欠けていたもの-

う蝕(むし歯)とは、歯の表面にベタベタしたノリのようなプラーク(バイオフィルム)をつくった細菌が、
歯からミネラルを奪って、歯の組織を破壊する病気です。
う蝕原因菌のつくるプラークは、飲食のたびに酸を作り、歯のなかからリンやカルシウムを奪います(脱灰)。
しかし唾液が酸を中和し、さらに奪われたリンやカルシウムを歯のなかに戻してくれます(再石灰化)。

歯の表面では、揺れ動くシーソーのようにこれを繰り返しています。
このバランスが崩れると一方的に歯のミネラルが奪われ、
ひどくなると歯の組織が崩れ、破壊され、穴があいてきます。
う蝕という病気は、このようにからだのバランスが崩れている傾向を
言います。
たとえば糖尿病が、糖の消費と生産のバランスが崩れて、
血液の中の糖の量が多くなる傾向をいうのと同じです。

いったん穴があいてしまったむし歯は削って詰めなければなりません。
しかしむし歯が治ったわけではありません.しかも削った分だけ不利な条件をかかえ込むことになります。

大切なことは、ひとりひとりのお口の中で起きている「脱灰」と
「再石灰化」のバランスを分析し、リスクを把握した上でコントロール
することです。
このことが本当のむし歯の治療なのです。
従来の「予防」の考え方ではこのような視点が欠けていたために、
充分な成果が上がりませんでした。

わたしたちの診療室では予防先進国の北欧で開発されたサリバテスト(唾液検査)を使った「リスク検査」と
呼ばれる検査法を用いることにより、信頼できる「新しいむし歯予防」のシステムを完成しました。

「新しいむし歯予防」システム

このシステムは以下の項目についてリスク(危険度)をチェックします。
①ミュータンス菌の数 ②ラクトバチラス菌の数 ③プラークの蓄積量 
④飲食の種類と回数と時間  ⑤唾液の緩衝能  ⑥唾液の質と量 
⑦フッ化物の利用状況 ⑧むし歯の経験 ⑨レーザーむし歯診断 など
これらのリスク検査により、診査・診断します。
その上で立案した発症抑制プログラムに沿ってリスクコントロールとプラークコントロールを行っていきます。

プラークコントロール

むし歯を引き起こしたり、再発させないために、プラークの増殖を抑制し、悪影響を及ぼさない程度に
いつもコントロールしていることが大切です。そのために、ご家庭で自分で行うホームケアと、
わたしたちでなければできない専門家によるプロフェッショナルケアを組み合わせることが有効です。

≪ホームケア≫
・ ブラッシング・フロッシング
・フッ化物利用・キシリトール等
≪プロフェッショナルケア≫
・フッ素塗布 ・食事指導
・PMTC(歯のクリーニング)
・3DS(ミュータンス菌の除菌)等

6才臼歯は歯の王様

6才前後に、乳歯の奥に乳歯より一回り大きい第一大臼歯が生えてきます。
この6才臼歯は、永久歯の中でも一番大きく、ものを噛む力も一番で、
永久歯の歯ならびと噛み合わせの中心的な働きをします。
しかし、生え始めは歯質が弱く、歯の溝も深く、しかも完全に生えるまでに
約1年もかかるため汚れやすい時期が長く、非常にむし歯になりやすい歯です。
生涯自分の歯で何でも良く噛み、おいしく食事を楽しむには、この6才臼歯の健康を
いかに守り育てていくかが鍵となります。(key tooth)

歯ならびと噛み合わせ

良い歯ならびと正しい噛み合わせへの関心が高まっています。
それは歯や口に影響するだけでなく、全身の健康や精神面に深く関わっています。
歯ならびの治療は、健康を損なわないための予防の一つなのです。
咀嚼や嚥下(飲み込むこと)は、さまざまな筋肉や連携プレーで成り立っています。
歯は、そこにかかるさまざまな力のバランスの上に、その位置を保っています。
歯ならびの乱れ、つまり歯のアーチがくずれていたり、上のアーチと下のアーチの噛み合わせが不適切だと、
この連携プレーや力のバランスに障害が起き、さまざまな異常が現れることがあります。
また歯ならびの状態によっては、むし歯や歯ぐきの病気にかかりやすくなります。
そのような問題を未然に防ぐことが、矯正治療の役割です。
歯の矯正治療は、みかけだけの問題ではなく、実は悪くならないように予防するという、
知的な生き方に対する価値を持っているのです。

口腔筋機能療法(MFT)

最近、うまく物が噛めない、うまく飲み込めない、口をいつも開けているなど、
お口の周りの筋機能がしっかり発育していない子供が増えてきています。
健全な口腔機能の発育のためには、口腔筋機能療法は大変大きな意味をもっています。
気になることがありましたら、いつでもお気軽にお尋ねください。

妊産婦の方へ

妊婦の歯科治療

妊娠中は、ホルモンバランスの変化や唾液の量が変化するために、歯ぐきに炎症を起こしやすくなります。
また、むし歯があると出産という大事業に支障になりかねません。
むし歯の部分にはたくさんの細菌がいるので、生まれてくる赤ちゃんのためにも妊娠の安定期に
むし歯を治して、清潔なお口にしておきたいものです。
昔から子どもを産むと歯が悪くなると言われてきました。
これは赤ちゃんに栄養をとられてしまうからだと思われがちですが、
実は生活のリズムが乱れ、食生活が偏り、口の衛生状態が悪くなることに原因があるというのが
真相のようです。
妊娠中の歯科治療は注意すべきことがありますので、妊娠が疑われる場合は、受診の際に必ずお伝えください。
安定期であれば通常の治療で問題はありませんが、妊娠に伴う特別な病気や、
治療期間に配慮する必要があります。

  • X線撮影:鉛入りのプロテクターを使用しますので心配いりません。
                    当院では妊娠に関わらず全員に使用します。
  • 薬の使用:妊娠8週以内はできれば避けたほうがよいでしょう。
                    比較的安全な抗菌剤は「ペニシリン系」「セフェム系」「マクロライド系」で
                    4~5日までの服用とします。
  • 鎮痛剤:必要な場合は、胎盤通過性の低い薬を選択します。
                 また出産直前には動脈管収縮作用の強い薬剤は避けます。
                 比較的安全な鎮痛剤として、アセトアミノフェン(カロナール®)等が挙げられます。
                 妊産婦にも通常の使用量で胎児への副作用の報告はありません。
  • 麻酔:通常の歯科治療で使用する量は問題ありません。
              痛みを抑え、ストレスを避けるようにします。
妊娠中のお口に現れやすい病気
妊娠性歯肉炎
妊娠中は、プロゲステロンとエストロゲンといった女性ホルモンの増加や内分泌の変調により、
歯と歯ぐきのすき間(歯肉溝・歯周ポケット)の細菌の種類が大きく変化します。
特に、Pi菌と呼ばれる歯周病原菌が増加します。
そして歯ぐきの発赤、腫脹と出血が起こりやすくなります。

妊娠性エプーリス(妊娠腫)
歯肉炎の症状が進行すると、歯ぐきに増殖性の腫瘤ができることがあります。
大きさは2~数㎝で、妊娠3ヵ月頃から発症して、出血しやすくなります。

う蝕(むし歯)
妊娠により口の中の唾液が酸性になり粘っこくなる。
食事の回数が増えて歯の脱灰が多くなる。
つわりなどで歯磨きがおろそかになりがちで汚れやすくなる。
などで、むし歯になるリスクが増加します。

これらの病変は、細菌(病原性バイオフィルム)が主な原因となって起こります。
女性ホルモンはその補助的な因子にすぎません。
これらの治療の基本はプラークコントロールです。
リスク検査とプロフェッショナルプラークコントロールを受けて、
清潔で健康なお口を保つことは胎児の健康にもつながります。

歯周病は低体重児早産の最大のリスク因子
最近の研究により、中等度から重度の歯周病にかかっている妊婦は、
早産・低体重児出産の危険が7.5倍も高く、
歯周病は、その最大のリスク因子であることが分かってきました。
歯周ポケット内で歯周病原菌が増加し、その内毒素が歯ぐきの炎症により血液中に流れ込み、
その影響で子宮や胎盤に障害を与えるためと考えられています。

0歳からのむし歯予防

う蝕(むし歯)は細菌感染症であり生活習慣病です

歯磨きはあまりしないのにむし歯になりにくい子どもがいます。
反対に 一生懸命磨いたり注意していてもすぐにむし歯になってしまう子がいます。
このような場合は、ミュータンス連鎖球菌(虫歯菌の中でも最悪玉菌)の数が多いことが
原因のことがあります。
このミュータンス菌は、常在菌と違って生まれながらに誰もが持ってるものではありません。
お母さんやまわりの大人を介して子どもの口にうつってしまうのです。
口の中に歯が生えてくると、もともと口の中にいた常在菌とミュータンス菌の間で歯の表面の縄張り争いが
繰り広げられます。
ミュータンス菌は歯にくっつく力が圧倒的に強いので、たくさん感染したり、
甘いものが口の中にあると勢いづいて、またたく間に歯の表面を占拠してしまいます。
この時期に悪玉菌が定着してしまうと、その子の口の中は、悪玉菌の天下になってしまいます。
これをひっくり返すには、大変な努力が必要です。
ミュータンス菌のつくるプラーク(バイオフィルム)は家庭での歯磨きだけでは完全に落としきれません。
さらに歯を溶かす酸の力も強力です。
怖いミュータンス菌から子どもの歯を守るためには、お母さんやまわりの大人のミュータンス菌の
コントロールが大事です。
もしミュータンスリッチ(ミュータンス菌が多い)の場合、歯ブラシやスプーンの共用は控えましょう。
できれば口移しも避けたほうが良いでしょう。
リスク検査によりミュータンス菌数などを調べ、プロフェッショナルケアにより感染を防止しましょう。

感染の窓

感染は常に起こっているわけではなく感染しやすい時期があることが分かってきました(感染の窓)。
はっきりと検証されているのは、1歳7か月からの1年間です。
ちょうど乳歯の奥歯が生えそろう時期です。
この時期以外にも、第2・第3の窓の存在も示唆されています。
この時期にミュータンス菌をシャットアウトできれば、残るは力の弱い常在菌だけです。
常在菌のつくるプラークなら歯ブラシで比較的簡単に落とせるので、
ケアさえ怠らなければむし歯になりにくい歯を維持することが可能です。

妊娠中の栄養と歯

妊娠中はビタミンA.B.C.Dが不足しがちです。
特にビタミンBの不足は歯周組織に悪影響を与え、歯肉炎を悪化させてしまいます。
必要以上に気にすることはありませんが、偏食は避けましょう。

乳歯は、妊娠5~9週でお腹の赤ちゃんのあごの骨の中で、歯の卵ができ始めます。
妊娠16週には、もう6才頃に生える第一大臼歯の大人の歯の卵ができ始めます。
この時期は、赤ちゃんのからだの元になる部分ができる時期ですから、お母さんの健康と栄養が特に大切です。
たんぱく質、カルシウム、ビタミンA・Dなどが歯には大切ですので肉、魚、卵、乳製品、緑黄色野菜などを
しっかり摂りましょう。カルシウムは1日900~1100mgが目安。

健康な歯ときれいな歯並びをつくる育て方

歯並びは遺伝的な要素だけで決まるものではありません。
食事を中心とした日常の生活習慣によって決定される割合が大きいのです。

第一歩はおっぱいを噛むことです。母乳は実は、噛んで吸って、お口の周りの筋肉を使って飲んでいます。
哺乳瓶を使う場合は、噛んで飲むタイプのものをお薦めします。
離乳食期には様々な味を体験させることが大切です。
偏食のある子にしないためにも、この時期にいろいろな食材を与え、さまざまな味を体験させて、
味のスペクトル(範囲)を広げてあげましょう。

忙しいときなど、つい市販のべビーフードにたよってしまいがちですが、そんなときにもブロッコリー、
ニンジン、ジャガイモなどのゆでた野菜を加えると味も噛みごたえもアップして効果的です。

はじめが肝心-健康習慣を身に付ける

最初の歯が生えたら、「フッ素入り歯磨き剤(ゴマ1粒程度)をつけて
歯ブラシで磨く」ことを習慣づけましょう。
この時期は、最も異種素材を受け入れやすい時期です。
使い始めが遅くなるほど嫌がるケースが増えてきます。

子どもは概して甘い物好きですが、これも習慣によるところが大きいといえます。
むずがったりすると、つい甘いお菓子を与えてしまいがちです。
歯の健康のみならず、からだの健康のためにも、はじめが肝心です。

このページの先頭へ戻る
メールでご相談を希望される方はこちら
初めて加藤歯科医院で受診される方へ
デジタルマンガ歯周病と生活習慣病
加藤歯科医院審美歯科・ホワイトニング専門サイト

院長から一言

私たちは今までの「痛い」「怖い」という歯科のイメージを変えていただけるよう、安心・安全・誠実をモットーに、自ら喜んで、楽しく、行きたくなる、そんな歯科医院になるよう
スタッフ一同取り組んでおります。

どんなときでも気軽にご相談ください。

診療の流れ

【イメージ】

当院は健康を守り育て維持する歯科医院です。しっかり検査・ていねいな説明 納得治療を心がけています。

詳しく見る

患者様の声

【イメージ】

医院にいらっしゃった、もしくは治療を終わられた患者様の声をご紹介します。
素直なご意見をいただくためにアンケートを実施しております。

患者様の声を見る

院内新聞

【イメージ】

当院は健康を守り育て維持する歯科医院です。しっかり慎重・ていねいな説明 納得治療を心がけています。

院内新聞を見る

歯の豆知識

院長コラム

診療時間

▼平日
午前 9:30〜12:30 午後 14:00〜18:30
▼土曜
午前 9:30〜12:30 午後 14:00〜17:30
休診日:木曜・日曜・祝日
診療カレンダーを見る

交通アクセス

【イメージ】アクセスマップ
駐車場 8台分あり
建物の前方3台分
建物の後方5台分
JR春日井駅 徒歩7分
車イスでも安心、リフトあります。
院内もバリアフリーで車イスのまま治療台の横まで入れます。

院内ツアー

【イメージ】

加藤歯科医院の院内をご案内します。居心地のよさを心がけています。

詳しく見る