むし歯という病気を治すには?
むし歯とは、歯の表面にベタベタしたノリのようなプラーク(バイオフィルム)をつくった細菌が、
歯からミネラルを奪って、歯の組織を破壊する病気です。
むし歯の原因菌のつくるプラークは、飲食のたびに酸を作り、歯のなかからリンやカルシウムを奪います(脱灰)。
しかし唾液が酸を中和し、さらに奪われたリンやカルシウムを歯のなかに戻してくれます(再石灰化)。

歯の表面では、揺れ動くシーソーのようにこれを繰り返しています。
このバランスが崩れると一方的に歯のミネラルが奪われ、
ひどくなると歯の組織が崩れ、破壊され、穴があいてきます。
むし歯という病気は、このようにからだのバランスが崩れている傾向を言います。
たとえば糖尿病が、糖の消費と生産のバランスが崩れて、
血液の中の糖の量が多くなる傾向をいうのと同じです。

同じような生活をしていても、同じように風邪をひくわけでもなく、
誰もが同じように糖尿病になるわけでもないように、むし歯だって、
甘いものが好きでもむし歯にならない人もいれば、
毎食後歯ブラシを使っていてもむし歯になる人もいます。
むし歯のかかりやすさには著しい個人差があります。
むし歯になったところを削って詰めても、かかりやすさの治療を行わなければまた悪くなります。
その繰り返しで歯を失ってしまいます。
歯は、老化ではなくならない
年をとってから歯がぐらぐらしたり抜けるのは、歯周病という病気のためです。
歯周病は、歯肉炎から始まり、進行すると歯を支える組織が徐々に溶けてしまう病気です。
10代の約60%が歯肉炎に、30代では80%の人が歯周病にかかっています。
しかし困ったことに、かなり悪くならないと自覚症状がでてきません。
歯が揺れる、歯ぐきが腫れて痛むというような症状を自覚した時には、すでにかなりの重症です。
生活習慣病といわれる慢性の病気は、ひどくなって、からだに障害が出てくると治癒は難しくなります。
歯周病も同じで、まず病気をひどくしないこと、かかり始めのうちに進行を食い止めることが大切です。
歯周病は、むし歯と同様、細菌の引き起こす病気であり(バイオフィルム感染症)生活習慣によって
かかりやすさが左右されます。
むし歯や歯周病の状態を調べるために様々な検査をします。
- レントゲン撮影(14枚法規格撮影・オルソパントモ撮影)
- 歯周ポケット測定(歯ぐきの溝の深さを測定)
- レーザーむし歯診断(レーザーう歯診断装置「DIAGONOdent」による測定)
- 口腔内写真撮影
- リスク検査(むし歯や歯周病のかかりやすさの検査)
これらの検査の結果をもとに、診査・診断することから治療と予防の第一歩が始まります。
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カリエスリスクレーダーチャート | むし歯が発症する可能性(%) |
リスクの把握とリスクコントロール
歯が痛くなったら歯科医院に行く、歯は悪くなったら治療すればいいという考え方が、
結局、自分の歯を失うことになってしまいます。
歯の病気は、自覚症状が出てくるのは、かなり悪化してしまってからです。
歯を失う二大疾患は、むし歯と歯周病です。
このような慢性の病気は、悪くなったら治療を受けるという繰り返しでは、根本的な解決にはなりません。
では、どうすれば・・・?
むし歯や歯周病は、お口のなかのプラーク(細菌の集まり)によって起こります。
ひどくなるかどうかは、個人差があり、その人の病原菌と、それに対する抵抗力によって異なります。
ですから、あなたがむし歯や歯周病にかかりやすいかどうか、
細菌と抵抗力に関わる因子(リスク因子)を検査・診断した上で、
そのバランスをコントロールすること(リスクコントロール)ができれば、
年をとっても歯で苦労する心配もなくなるでしょう。
健康を守り・維持するためには、適切な処置はもちろん、リスクの把握と継続したリスクコントロールが必要です。
そのために歯科医院を利用してください。それが「かしこい歯科のかかり方」です。
リスクコントロール
プラークをコントロールする。
むし歯と歯周病予防の中心は、原因であるプラークの増殖を抑制し、
悪影響を及ぼさない程度にいつもコントロールしておくことです。
そのために、自分自身によるパーソナル・プラークコントロール(セルフケア)とともに、
わたしたちでなければできない知識や技術、器具を用いた
専門家によるプロフェッショナル・プラークコントロール(プロケア)が必要となります。
「自分の健康は自分で守る」という意識を大切にしてください。
そのための専門的なアドバイスやバックアップは私たちが全力で行います。
健康を守り維持するために
わたしたちは、健康を守り維持するために通っていただく診療室づくりを心がけています。
健康を守り維持する受診では、科学的できめ細かな診断をしたうえで、
必要であれば最小限の治療を行い、発症抑制のためのプログラムを作成し、
それに沿って専門家のケアを 担当の歯科衛生士が提供します。
あなたも健康を守るかかり方を始めませんか?
まず、むし歯や歯周病のかかりやすさの検査(リスク検査)など、
自分のことをもっとよく知っていただくための検査を受けていただくことをお勧めします。
セルフケアも治療も、自分自身のからだについてよく知ることから始まります。
充実した健やかな生活を送るために、ご一緒に頑張りましょう。