- むし歯は防げます。
- 定期ケア(メインテナンス)が必要なわけ
- 3Mix-mp法
- できるだけ削らないむし歯治療
- 噛めば噛むほど元気な「あたま」と「からだ」
- 子どもの食生活―8つの提案
- 健康管理ファイル知識編
むし歯は防げます。
甘いものが好きなのにむし歯になりにくい人、よく歯磨きをするなど気をつけていても
むし歯になりやすい人がいます。
むし歯は誰もがいつでもかかる病気ではありません。
インフルエンザが大流行してもかかる人とかからない人がいます。
むし歯も、やはり細菌感染症です。むし歯にかかりやすい人とかかりにくい人がいるのです。
さらに、なりやすい歯とそうでない歯があります。なりやすい部分とそうでない部分があります。
なり易い時期もあります。
むし歯ができるわけを考えればなるほど納得です。
歯はいくつもの条件が重ならないとむし歯にはならないのです。
-今までのむし歯予防に欠けていたもの-
う蝕(むし歯)とは、歯の表面にベタベタしたノリのようなプラーク(バイオフィルム)をつくった細菌が、
歯からミネラルを奪って、歯の組織を破壊する病気です。
う蝕原因菌のつくるプラークは、飲食のたびに酸を作り、歯のなかからリンやカルシウムを奪います(脱灰)。
しかし唾液が酸を中和し、さらに奪われたリンやカルシウムを歯のなかに戻してくれます(再石灰化)。
歯の表面では、揺れ動くシーソーのようにこれを繰り返しています。
このバランスが崩れると一方的に歯のミネラルが奪われ、
ひどくなると歯の組織が崩れ、破壊され、穴があいてきます。
う蝕という病気は、このようにからだのバランスが崩れている傾向を
言います。
たとえば糖尿病が、糖の消費と生産のバランスが崩れて、
血液の中の糖の量が多くなる傾向をいうのと同じです。
いったん穴があいてしまったむし歯は削って詰めなければなりません。
しかしむし歯が治ったわけではありません.しかも削った分だけ不利な条件をかかえ込むことになります。
大切なことは、ひとりひとりのお口の中で起きている「脱灰」と
「再石灰化」のバランスを分析し、リスクを把握した上でコントロール
することです。
このことが本当のむし歯の治療なのです。
従来の「予防」の考え方ではこのような視点が欠けていたために、
充分な成果が上がりませんでした。
わたしたちの診療室では予防先進国の北欧で開発されたサリバテスト(唾液検査)を使った「リスク検査」と
呼ばれる検査法を用いることにより、信頼できる「新しいむし歯予防」のシステムを完成しました。
このシステムは以下の項目についてリスク(危険度)をチェックします。
①ミュータンス菌の数 ②ラクトバチラス菌の数 ③プラークの蓄積量
④飲食の種類と回数と時間 ⑤唾液の緩衝能 ⑥唾液の質と量
⑦フッ化物の利用状況 ⑧むし歯の経験 ⑨レーザーむし歯診断 など
これらのリスク検査により、診査・診断します。
その上で立案した発症抑制プログラムに沿ってリスクコントロールとプラークコントロールを行っていきます。
むし歯を引き起こしたり、再発させないために、プラークの増殖を抑制し、悪影響を及ぼさない程度に
いつもコントロールしていることが大切です。そのために、ご家庭で自分で行うホームケアと、
わたしたちでなければできない専門家によるプロフェッショナルケアを組み合わせることが有効です。

≪ホームケア≫
・ ブラッシング・フロッシング
・フッ化物利用・キシリトール等
≪プロフェッショナルケア≫
・フッ素塗布 ・食事指導
・PMTC(歯のクリーニング)
・3DS(ミュータンス菌の除菌)等
定期ケア(メインテナンス)が必要なわけ
虫歯や歯周病は、細菌の感染によって起こります。
そこに、唾液や食事など生活習慣や炎症などの要因がからんで生じるのですが、
この細菌は、風呂場や流しのパイプの内側にこびりついているヌルヌルした汚れと同じで、
簡単には落ちない頑強な細菌の構造体(バイオフィルム)をつくっています。
このため、薬はほとんど効きません。
これを放置しておくと、細菌から毒素や刺激物質が出つづけ、歯や歯を支える組織が破壊されてしまいます。
そこで、自分自身で行うパーソナルプラークコントロール(セルフケア)とともに、
このしつこい細菌の塊を除去するために、わたしたちでなければできない知識や
技術・器具を用いた、専門家によるプロフェッショナルプラークコントロール(プロケア)が必要になります。
歯面に付着した細菌は、時間の経過とともに数を増やし、小さな集団(マイクロコロニー)になります。この細菌の集団がさらに増え、細菌の出す分泌物に覆われて、フィルム状になり歯面に強固に付着するオーラルバイオフィルムになります。
厚生労働省は最近、国民の健康目標「健康日本21」発表しました。
そこには「定期的に歯石除去や歯面清掃を受ける者の割合」を増やそうと目標を
掲げて呼びかけていますが、その理由はここにあります。
口の中のプラークを健康に保つことは、からだの健康にもつながります。
高齢者の誤嚥性肺炎予防ばかりでなく、最近の研究では、口の中の細菌や歯ぐきの炎症は、
動脈硬化や脳卒中、妊婦の低体重児早産の原因や、2型糖尿病のリスク因子になるなど、
アメリカで全身疾患との関係の研究発表が相次ぎ、センセーションを巻き起こしています。
車や家が、定期的なメインテナンスによって美しく長持ちするように
お口の健康についても同じことがいえます。
メインテナンスは、治療などによって得られた健康な状態を持続させ再発を防ぐことを目的としています。
例えば歯周ポケット内の歯周病原菌群は、処置後12~16週でもとの細菌叢に戻る傾向があることが
最近の研究で明らかになっています。
そこでリスクの程度に応じた今後のメインテナンスプログラムを立案し、
それに沿ってリコール(次回来院日)が設定されます。
リコールは必ず守り、大切なお口の健康を保ってください。
もしリコールでのメインテナンスを定期的に行わないと、
病気を再発させたり進行させてしまうことがあります。
・バイオフィルムとPMTC - 近年の研究で、う蝕や歯周病はバイオフィルム感染症であると認識されている。
細菌の出す分泌物のフィルムに覆われているため抗菌物質が効かず、強固に付着しているため
歯磨きだけでは難しく、専門家による機械的清掃(PMTCなど)が最も有効であるといわれている。
・3DSとは - PMTC後に薬剤を応用しミュータンス菌の除菌を目的としたシステム。
型取り後ドラッグリテーナーを製作し効果的に除菌する。
・フッ化物応用 - 虫歯予防には必須。歯磨剤と歯科でのフッ素塗布併用
悪くなったら治療を受けるというかかり方から、悪くならないように予防のために歯科に通うというのは、
いまや世界の常識です。
アメリカでは、全国民の約80%の人が健診やクリーニングのために定期的に歯科を受診しています。
歯の健康管理が進んでいるスウェーデンでは20歳未満のほぼ全員が、
成人は比較的高額の費用がかかるにもかかわらず90~95%の人が定期的な管理を受けています。
最近日本でもそのような歯科のかかり方をする人が徐々に増えてきました。
厚生労働省の調査では、50歳以上の国民は10年間に平均5.4本の歯を失っています。
これに対して定期管理を受けている人たち(日本ヘルスケア歯科研究会データ・通院患者30歳以上)を調べると10年間に平均0.7本の歯しか失っていません。
失敗してから痛い思いをしてお金をかけて頻繁に通うか、気持ちよく定期管理のために年に何回か通うか?
定期的に美容院や散髪に行くように健康管理のために通う方が、賢い歯科のかかり方だと思いませんか?
お口と全身の健康との関係が次第に明らかになり「歯の数が多い方がQOL(生活の質)や
ADL(日常生活活動能力)、視力と聴力、運動能力等が高い」ことが分かってきました。
痴呆とも関係し、また、よく噛むことは肥満予防・がん予防・胃腸の快調・美容などにもつながります。
わたしたち歯科医師と歯科衛生士など専門スタッフは、それぞれの役割を通して、
皆様の健康を守り・維持する「かかりつけ歯科医院」でありたいと願っています。
ぜひ、定期的な来院と、毎日のパーソナルプラークコントロール(セルフケア)を守り、
あなたの健康を増進してください。
3Mix-mp法
これまで、深いむし歯の治療は、
そこも取り除くことが一般的に行われていました。
しかし、歯髄は歯に栄養を与え、細菌などから体を守る免疫の働きを受け持つ大切な組織です。
歯髄を取った歯はもろくなり、将来、治療のやり直しや歯根が割れて抜歯になることもあります。
そこで、考えだされたのが『3Mix-mp療法(病巣無菌化組織修復療法)』です。
これまでの治療法と大きく違うのは、歯そのものの生きる力を活用するために、
細菌だけを殺す治療をすることです。
この方法により、大きく深いむし歯も削る量を最小限に抑え、歯髄を残して歯を守ることが可能になりました。

内科で使う3種類の抗菌剤を使って細菌を殺し、歯自身の回復力を活かして歯を救う治療法です。
むし歯に感染した部分は最小限削り、そこに3種類の抗菌剤を混合した薬を塗ります。
薬の上を保護剤で覆い、その上から修復材料を詰めます。
- むし歯のすべてのケースで救えるわけではありません。限界があることをご承知ください。
- 治療後、治療の刺激やお薬の効果で一時的に痛みが出ることがあります。通常はじきに治まりますが、
ひどく痛む場合は歯髄を救えないかもしれません。その場合は連絡して下さい。 - 治療後しばらくたってから歯髄が死んでしまうこともありますので、定期的なチェックを受けて下さい。
※テレビや雑誌などで「歯を削らず、痛くない虫歯治療」などと紹介され、過度の期待をされることがあります。
しかし、実際には歯髄に近い部分以外は削りますし、深い虫歯には麻酔もします。
薬剤を有効に働かせるためには、周りを完全封鎖する必要があるためです。
当院は、3Mix-mp療法の正規の「会」に所属し、厳密な薬剤管理を行っています。
この療法は、自己流や亜流が多く、その結果、効果がないと判断されてしまうことがあります。
非常に残念なことです。
この療法は、虫歯の治療だけではなく、痛んだ歯の根の治療にも使います。
当院には、この療法を受けるために、他の歯科医院から紹介された方も来院されます。
他院での治療後、不快な症状が続いていたケースでも、1回の治療で治り驚かれることもあります。
歯の痛んだ箇所には細菌が多く、無菌化できることは治療の予後も安心ですし、
当院にとってはなくてはならない治療法です。
しかし、万能の治療法ではありません。
効果の出ないケースもありますことをご承知おき下さい。
できるだけ削らないむし歯治療
今までの歯科治療では、むし歯に侵された部分を大きく削り、詰め物を入れるために
修復材料に合わせて健康な歯まで削ってしまうという方法が取られてきました。
しかし、現在ではむし歯になりやすい条件(リスク)を変え、
定期ケアでプラークコントロールを行うことにより、
むし歯の進行を抑制できることが分かりました。
また、従来のように大きく歯を削らなくてもよい修復材料が開発され、必要以上に歯を削らずに、
経過を観察して歯の再石灰化を促す歯質保存的な治療を行うことが可能になりました。
当医院ではこのようなミニマルインターベンション(Minimal Intervention:最小の侵襲)
という考え方を積極的に取り入れた治療を行っています。
一度歯を削ってしまうと、削った部分が大きければ大きいほど歯が弱くなり、
いずれは再発と修復を繰り返すようになってしまいます。
また、審美的な面でも本当の自分の歯に勝るものはありません。
少しでも多く歯を残す事は、私達歯科スタッフだけの努力だけでは不可能です。
皆さんの日頃の予防に対する姿勢が何より大切です。
予防やむし歯の進行の抑制は、お口の中の状況を正確に把握することから始まります。
むし歯になりやすい体質なのか、唾液の量はどうか、お口の中の細菌の状況はどうかなどを
検査し、一人ひとりに合った口腔ケアをしていきます。
ごく初期のむし歯は、削らず治す | 進行したむし歯は、削る量を最小限に |
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本当のむし歯治療とは、リスクコントロールと プラークコントロール |
歯は削れば削るほど、悪化のリスクが大きくなる |
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むし歯・歯周病「一生笑顔」を約束する新しい歯科の知識(法研) 「歯科」本音の治療がわかる本(法研)より改変 |
噛めば噛むほど元気な「あたま」と「からだ」
1.脳の働きを活発にする
よく噛むと脳血流の循環が活性化され、脳細胞の働きが活発になります。
また唾液中のパロチンが記憶力や知能を高めて老人性痴呆症の原因物質の
発生を防ぎます。
痴呆防止に効果があります。
2.老化を防ぐ
長生きホルモンといわれるパロチンは顔色を良くし、肌に張りをもたせ、
髪の毛の発毛を促すなど,若さを保つ力を発揮します。動脈硬化予防も。

3.肥満を防ぐ
ゆっくりよく噛むことにより満腹中枢を刺激し食べすぎを防ぎます。
メタボリック症候群など生活習慣病予防効果あり
4.がんを防ぐ
唾液に含まれるペルオキシターゼという酵素が発癌物質を抑えます。
様々な発癌物質に著効あり。
5.全身の体力向上とストレス解消
よく噛むことで力がわき、日常生活への自信も生まれます。
活力向上とストレス解消に効果あり。

6.胃腸の働きを促進する
よく噛むと唾液の中の消化酵素がたくさん出ます。
胃腸の本来の免疫機能を高め、また食中毒予防にも効果あり。
7.味覚の発達を促します。発音がきれいになり、顔の表情も豊かになる

8.歯の病気を防ぎ、口臭を少なくする

"噛みしめる"って素晴らしい。
―失って始めて分かる「歯」のありがたさ―
奥歯の役割
- 好きなものをおいしくいただくために
- 歯ごたえを楽しむために
- くいしばって頑張るために
- 身体のバランスを整えるために
- 前歯を保護するために
- 歯列の崩壊を防ぐために

奥歯はとても大切な役割を果たしています。
奥歯を守る

そんな大切な働き者の奥歯は、ストレスも多く、寿命も短め、
「なんとか長持ちさせたい」、「むし歯から守りたい」、
「歯周病から守りたい」、「歯根破折から守りたい」、
そんな願いを叶えるために歯科医学が発展してきました。
歯を守る現在の治療法

支えの土台は、グラスファイバーの芯で歯と一体化
精度の高い型取りで、ピッタリ合った歯を精密技工
しっかり接着、そして細菌の進入阻止
周りに、バイ菌がつきにくく、落ちやすい
噛み合わせもバランスよく、よく噛める
そんな治療を自分は受けたい、受けて欲しい。
いつまでも健康であって欲しいから
私たちはお口の健康づくりを通してあなたのより良い生活づくりを応援します。
子どもの食生活―8つの提案
以下の8つの提案は、大切な順番に書いてあります。
食生活は大切なことほど簡単で手間もかからず、経済的なため、誰でもできることです。
逆に小さな問題ほど、手間もお金もかかり難しくなります。
ですから、この順番をまちがうことのないようにしてください。
特に①から④までが大切です。
ここを抜きにして⑤以降を見直すことはできません。
①から順番に見直しましょう。
成長期の子どもは、代謝が激しい(水分の入れ替えが大きい)ため、水分欲求が大きいのが特徴です。
したがって飲み物の選択がもっとも大切です。
飲み物は水分を補給するものであって、熱量(カロリー)を摂るものではありません。
飲み物で熱量を摂ってしまうと、きちんと食事をしなくなってしまいます。
またその結果、お菓子を欲しがるようになります。
歯の健康のためにも飲み物は、熱量のない水、麦茶、ほうじ茶などにしましょう。
朝食はできるだけ「ご飯と味噌汁」を食べさせてください。
忙しい場合は、前夜のご飯と味噌汁を温め直せば十分です。
副食は焼きのり、納豆、漬物、佃煮、梅干し、ふりかけなどの常備食を利用しましょう。
食事を作る時間、食べる時間のないときはパンも仕方ありません。
食べさせないよりは良いでしょう。
ただし、パンはお菓子を食べさせているようなものですので、常食は好ましくありません。
子どものおやつは、4回目の食事です。
ただし、4回も食事を作るのが大変ですから、簡単なものでよいのです。
おにぎりやのり巻きなどが一番好ましく、うどん、そば、さつまいも、トウモロコシ、
せんべいなどの「穀類」「いも類」を中心にしましょう。
砂糖の入ったお菓子や油脂類の多いお菓子は極力控えたいものです。
スナック菓子と清涼飲料水(スポーツ飲料など)は買わないようにしましょう。
ラーメン、パン、シリアル、パスタ、ピザ、ハンバーガー、焼きそば、お好み焼きなど「油型」の主食は
週に1~2回までにしましょう。カタカナ主食に合わせる副食は、油脂が多くなる傾向があるため好ましくありません。
副食は季節の野菜、海草類、いも類などを中心にします。
野菜料理は、煮物、和え物、おひたしなど油の少ない料理を中心にしましょう。
動物性食品は魚介類を中心にしましょう。
肉や食肉加工品、乳製品などは控えめにしましょう。
可能であれば、米は未精製のご飯を常食したいものです。
一番のおすすめは5分づき米です。栄養素は十分残っているにもかかわらず、
比較的白いため食べやすく、一般の電気炊飯器で炊くことができます。
あるいは、7分づき米や胚芽米などもよいでしょう。
いずれにしても家族全員が食べられるものを選びたいものです。
無理のない範囲で、食品添加物、農薬、ポストハーベスト農薬などに配慮したいものです。
あくまでも、④までを見直してから検討しましょう